• 10月 17, 2024

痛風・高尿酸血症の最近の進歩3

今回は高尿酸血症の治療に関してより発展的な内容を記載しました。最初に患者さん向けに分かりやすくまとめを示して、その後に詳細な説明を記載します。

患者さん向けまとめ

慢性腎臓病など腎機能障害に伴って高尿酸血症になることがありますが、その場合は原則として尿酸生成抑制薬の使用が勧められます。

痛風発作の既往歴のない高尿酸血症に関しては現時点で確立したエビデンスはありませんが、慢性腎臓病などの合併症がある場合には、血清尿酸値8.0mg/dL以上で尿酸降下薬による治療が望ましいと考えます。合併症を有する無症候性高尿酸血症では合併症の治療を優先し,この際に尿酸降下作用も併せもつ薬物を選択することで薬の数を増やすことなく血清尿酸値の低下を図ることができます.高血圧ではロサルタンカリウム,高LDL血症ではアトルバスタチン,高中性脂肪血症ではフェノフィブラート,糖尿病ではSGLT2阻害薬やピオグリタゾンなどを選択するとよいです.

CKDに伴う高尿酸血症での考え方

症例2

65歳女性.糖尿病性腎症にて外来で経過観察されていました.

身長160 cm,体重65 kg.血圧150/85 mmHg,脈拍76/分,整.

血液検査:Alb 3.9 g/dL,BUN 24.0 mg/dL,Cr 2.50 mg/dL,UA 8.5 mg/dL,HbA1c 7.1%.

尿検査:蛋白2+,尿潜血(-)

本例での高尿酸血症に対してどのように対応すべきでしょうか?

典型的な糖尿病性腎症に伴う高尿酸血症の症例です.eGFR 15.9 mL/分/1.73 m2でCKD stage 4になります.血清尿酸値が8.0 mg/dL以上であり,薬物治療の適応と考えられます.CKDに伴う高尿酸血症に対してXOR阻害薬による治療は腎障害進展抑制に有効である可能性があります.本例では中等度以上の腎機能障害があり,尿酸排泄促進薬の効果が弱まることが想定されるため,原則として尿酸生成抑制薬の使用が勧められます.アロプリノールは腎機能低下時には投与量を減じる必要があり,本例ではCKD stage 4であるため50 mg/日が推奨されます.フェブキソスタットとトピロキソスタットは胆汁からの排泄があり,腎機能障害のある症例でも使用しやすいです.ただし,本例は中等度以上の腎機能障害を認めており,少量から開始して慎重に漸増することが望ましいです.

●処方例

フェブキソスタット(フェブリク®)1回10 mg 1日1回(朝食後)

トピロキソスタット(ウリアデック®)1回20 mg 1日2回(朝夕食後)

アロプリノール(ザイロリック®)1回50 mg 1日1回(朝食後)

薬物療法後TLSでの考え方

症例3

70歳男性.左上葉肺癌,肝転移に対して薬物療法を施行されました.投与後4日目に血清尿酸,カリウム,クレアチニン値が上昇しました.

身長160 cm,体重55 kg.血圧105/55 mmHg,脈拍104/分,整.

血液検査:Alb 2.9 g/dL,BUN 35.0 mg/dL,Cr 2.4 mg/dL,UA 13.3 mg/dL,Na 132 mEq/L,K 6.0 mEq/L,Cl 102 mEq/L.

本例での高尿酸血症に対してどのように対応すべきでしょうか?

本例では肺癌に対する薬物療法後の腫瘍崩壊症候群(TLS)が強く疑われます.肺癌はTLS発症低リスク群と考えられていますが,近年,抗腫瘍効果の高い分子標的治療薬などが上市され,発症頻度が増加する可能性が指摘されています.本例では腎機能障害が出現しており,ラスブリカーゼが第1選択と考えられます.アロプリノールは,尿酸の前駆体であるキサンチンやヒポキサンチンの濃度を上昇させ,キサンチン析出によりキサンチン腎症を発症する可能性があり,腎機能障害がある本例では使用しにくいです.フェブキソスタットは,2016年5月に「がん化学療法に伴う高尿酸血症」の効能・効果が追加承認されました.本例ではよりすみやかな尿酸低下作用のラスブリカーゼが第1選択ですが,ラスブリカーゼを以前に投与したことがある患者では,フェブキソスタットを使います.

●処方例

ラスブリカーゼ(ラスリテック®)0.2 mg/kg/回 1日1回点滴 最大7日間投与

フェブキソスタット(フェブリク®)1回60 mg 1日1回内服

アロプリノールはキサンチン腎症を発症する可能性があり,やや使用しにくい.

おわりに

痛風への薬物治療適応に関してのコンセンサスとして,血清尿酸値>7.0 mg/dLで治療を開始します.無症候性高尿酸血症については血清尿酸値をコントロールすることで臓器障害の発症ないし進展を抑制できるかの介入試験は小規模なものにすぎず,現時点ではエビデンスは十分とはいえないため,第3版のガイドラインでは条件付きで推奨するとされています.無症候性高尿酸血症で合併症がある場合,血清尿酸値8.0 mg/dL以上を介入の開始点として,管理目標値は6.0 mg/dL未満を一応の目安にすることが想定されますが,もちろんポリファーマシー,副作用,医療経済的な観点から,総合的に判断すべきと考えられます.

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