腎臓内科について
腎臓は血液を濾過し、老廃物を尿として体外に排出したり、塩分や水分などの排出量をコントロールするなど、重要な働きを担っています。腎臓内科は、この腎臓に関連した病気を内科的に診断・治療する診療科です。血尿や蛋白尿が続く方、腎機能が低下した方などを主な対象としています。当院では、健診などで尿の異常を指摘された方をはじめ、慢性腎臓病、腎盂腎炎、腎不全、糖尿病性腎症などの診療に幅広く対応いたします。
腎臓の重要性
腎臓はほかの臓器に比べて目立たない臓器と思われるかもしれませんが、老廃物として尿を作り、身体の恒常性を保つという生命に必須の役割を担っています。ナトリウムやカリウム、カルシウム、リンなどの電解質の濃度を一定の範囲内に保つ非常に精緻なシステムを司っているのです。また腎臓はKlothoという抗老化蛋白を多く発現しており、老化や長寿と密接な関係性があります。
腎臓は身体の恒常性を保つという生命に必須の役割を担っているため、その機能が失われた末期腎不全の患者さまは、心血管疾患や皮膚疾患、感染症など様々な合併症のリスクが高まります。このような患者さまの治療を適切に行うため、東京大学やカナダ・モントリオールのMcGill大学などで培ってきた経験を活かしてまいります。
腎臓内科で扱う代表的な疾患
慢性腎臓病、腎盂腎炎、腎不全、糖尿病性腎症 など
慢性腎臓病
慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の機能が慢性的に低下してしまう病気です。実は1330万人(20歳以上の成人の8人に1人)もの患者がいると言われ、新たな国民病ともいわれています。生活習慣病(高血圧、糖尿病など)やメタボリックシンドロームとの関連性も強く、誰もがかかる可能性があります。初期の段階では目立った症状がみられないのですが、きちんと治療を受けずに放置していると、腎臓の機能が徐々に低下し、心不全や心筋梗塞、脳梗塞などの病気を併発する可能性が高くなります。慢性腎臓病が進行してから医療機関を受診した場合には人工透析や腎移植などの治療が避けられなくなる場合があります。なお、患者さまご自身は自覚されていないことが多いのですが、尿検査や血液検査をすることで発症に気づくことができます。最近、腎機能低下の進行を遅らせることができる治療薬がさまざま報告され、当院でも個々の患者さまに最適な治療をご提案しております。慢性腎臓病は早期発見が大切ですので、定期的に健診を受けるなどしてください。
腎盂腎炎
腎盂や腎杯に細菌が侵入してしまい、腎盂に炎症が起きている状態です。膀胱炎などで引き起こされる頻尿、排尿痛、尿の混濁などの症状もみられますが、全身に影響が起こりうるため、38℃以上の発熱、吐き気、背中や腰の痛み、全身倦怠感といった症状もみられるようになります。主な原因としては、膀胱炎がさらに広がって腎盂にまで達しているケースが考えられます。先天的に尿路閉塞がある、前立腺肥大症や尿路結石などを発症している、糖尿病が進行している、といった患者さまは特に注意が必要です。
患者さまの症状などから腎盂腎炎が疑われる場合は、細菌検査を行います。医師が必要と判断したときは、腹部超音波検査や腹部CT検査といった画像検査を追加することもあります。こうした検査によって腎盂腎炎の治療が必要となったときは、主に抗菌薬を使用します。なお、お薬によって症状が良くなったと感じられるようになりますが、その段階では細菌がまだ残っていることもあるので、医師の指示通りにお薬を服用するようにしてください。
腎不全
腎臓の病気などが進行し、血液を濾過する機能が低下すると、老廃物を十分に排泄することができなくなります。言い換えると、体内には体に不必要なものや有害なものが溜まってしまい、様々な問題が起こります。腎不全は、腎臓の働きが正常の30%以下に低下してしまい、最終的には命に関わる状態に陥る病気です。
なお、腎不全には急激に機能が低下する急性腎不全と、数カ月から数十年という長い期間をかけて、徐々に腎臓の機能が低下する慢性腎不全があります。前者の場合は、血尿、吐き気、食欲不振、全身の倦怠感、意欲の減退、痙攣などの症状が急激に強まります。主な原因としては、心臓病、薬剤の影響、急性糸球体腎炎、尿路結石、前立腺肥大症などが考えられるので、早急に原因を突き止め、腎機能の悪化を食い止めます。
慢性腎不全の場合は、自覚症状がないまま、ゆっくりと腎機能が失われていきます。これによって体内の正常な環境を維持できない状態になります。最終的には人工透析や腎移植をしなければ生命維持が難しくなってしまいます。このような状態に陥らないためには、なるべく早い段階から腎臓内科を受診し、必要な治療を受けておくことが大切です。
糖尿病性腎症
糖尿病によって腎臓に影響が及ぶ合併症として、「糖尿病性腎症」があります。これは、糖尿病網膜症、糖尿病神経障害とともに糖尿病3大合併症の一つとなっています。糖尿病によって高血糖の状態が長く続くと、全身の大小の血管に障害が生じます。腎臓の糸球体は、特にその影響を受けやすい臓器なので、糖尿病が進行すると老廃物が体に溜まったり、体に必要なものが漏れ出してしまったりして、様々な障害があらわれます。
初期の段階では、あまり自覚症状はないのですが、進行していくと、電解質の体内バランスをうまく調整できないようになり、むくみ、頭痛、高血圧、夜間頻尿などの症状があらわれます。そして最終的には腎不全となり、人工透析が必要になってしまいます。
現在、血液透析になる原因の1位が、この糖尿病性腎症です。できるだけ早期のうちにこの疾患を発見し、適切な治療を早期に開始することが重要です。
腎硬化症
腎硬化症とは、高血圧を原因とする腎障害です。高血圧が長期間続くことで、腎臓の血管に動脈硬化が生じてきます。この動脈硬化のために血管の内腔が狭くなり、腎臓を流れる血液量が減少してしまうので、腎臓は萎縮して硬くなり、腎臓の機能が低下してしまいます。人口の高齢化とともに腎硬化症は増加してきています。腎硬化症の治療の中心は、やはり血圧コントロールであり、そのためには生活習慣の改善や適切な降圧薬による治療が必要です。
糸球体腎炎
腎臓の濾過装置である糸球体に炎症が生じることによって、たんぱく尿や血尿が出る疾患を総称して糸球体腎炎といいます。急性糸球体腎炎と慢性糸球体腎炎の2種類があります。
急性糸球体腎炎は、のど風邪の1~3週間後にたんぱく尿・血尿、尿量減少、むくみ、高血圧で発症し、小児や若年者に多い疾患です。急激に腎機能が低下してしまうこともありますが、適切な治療により多くの場合は後遺症も少なく、治癒します。
慢性糸球体腎炎(慢性腎炎)は、たんぱく尿や血尿が長期間持続するものを言います。原因としては、免疫反応の異常によるものが多いと考えられています。慢性糸球体腎炎はさらにさまざまな疾患に細分化され、原因を調べるために腎生検を含めた詳細な検査が必要になることがあります。
ネフローゼ症候群
大量のたんぱく尿が出てしまい全身がむくんでしまう病気をネフローゼ症候群と言います。血液中のたんぱくが減り、その結果、むくみ、体重増加などが起こります。食欲低下や下痢、肺に水がたまって苦しくなることもあります。大量のたんぱく尿が続くと腎機能が低下するため、尿たんぱくを減らす治療を開始する必要があります。糖尿病性腎症からネフローゼ症候群になることがありますが、糖尿病性腎症以外の疾患が考慮される場合には原因を調べるために腎生検が必要になることが多いです。